食欲が止まらないと感じる日は、からだの小さなサインに気づけていないだけかもしれません。
東洋の見立てでは、空腹感が早く強く出て量を食べたくなる胃熱(いねつ)、真の空腹ではないのに口寂しさから味の濃いものや甘味を求めてしまう肝気鬱結(かんきうっけつ)といった傾きが語られます。
どちらも“我慢”で抑え込むより、食べ方の順番と温度、呼吸と所作を少し整える方が、穏やかに落ち着いていきます。
まずは食前の一息を整えましょう。
白湯や温かいお茶を数口、背すじをすっと伸ばし、吐く息をいつもより少し長めに。
これだけで胃が静かに目を覚まし、急いで食べたい気持ちがゆるみます。
胃熱が気になる日は辛味や油を控えめに、気持ちの張りを感じる日は香りの良い温かい湯物を先にひと口、を合図にしてみてください。
食事は最初の一口を汁物にして、からだをやさしく起こします。
次に、蒸し鶏や豆腐、卵などのたんぱく質に、ねぎ・しそなどの香りを添えて“気”をほどく。
そのあとに野菜・きのこ・海藻を重ね、主食は最後に“すこしだけ”。
とろみやだしを利かせると、量を増やさず満足感が続きます。
胃熱が高ぶりやすい方は揚げ物や辛味の“追い足し”を控え、濃い味は薄めに。
肝気の張りで衝動が出やすい日は、ひと口ごとに呼吸を深めるつもりでゆっくり噛むのがコツです。
📖食材のヒント
食欲が強く出やすい“胃熱”が気になる日は、にがうり・ズッキーニ・緑豆・はと麦・豆腐・わかめを、常温〜温の料理でやさしく。
トマトやきゅうりは冷やしすぎず、スープやさっと炒めにすると続けやすくなります。
口寂しさが先行する“肝気鬱結”の日は、しそ・ねぎ・柑橘の皮(少量)・セロリ・玉ねぎ・三つ葉など香りのある一品を添えて、食べ方のスイッチをそっと入れ替えます。
たんぱく質は鶏むね・白身魚・豆製品の軽いものを蒸す・湯通し・さっと炒めで。
重たくなりやすいときは揚げ物や濃い味の“追い足し”を控え、だしやとろみで満足感をつくります。